2024.04.15
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『EkiLabものづくりAWARD2023』授賞式開催。綱引きに始まり新テーマ発表で結んだ式典の模様を報告!

燕市vs三条市の戦いから始まった第4回の授賞式


『燕三条こうばの窓口』で『EkiLabものづくりAWARD2023』(以下、AWARD)の授賞式が開会するのは15時。その3時間前から、JR燕三条駅の構内には200名を越える人々が集結していた。一種異様な空気を醸す大勢の中央に横たわっていたのは、運動会でよく見る大綱だった。

『負けられない戦い! 燕市vs三条市 綱引き大会』

これは、AWARDを主催する株式会社ドッツアンドラインズの代表であり、審査員でもある齋藤和也さんが、自身の名を冠した審査員賞に選んだ2023年の応募作品だ。目的は、隣り合った燕市と三条市に古くからあるとされる因縁の決着。それを綱引きというシンプルかつ明快な方法で示した作品は、ものづくりが主体のコンテストで“ことづくり”を提案するという斬新さが光っていた。

ならば授賞式当日に実現してみようという呼びかけに応じたのが、『燕三条こうばの窓口』の登録者を通じて集まった地元の人々。燕市在住者はJR燕三条駅1階の西側に面する燕口に。同じく三条市在住者は東側の三条口に分かれ、それぞれ1回の参加者60名を選抜し、5回勝負3本先取の戦いに挑んだ。

「実際にやったらきっとおもしろい」という声が審査会で挙がった綱引き。その予感が的中するように、結果は3勝2敗の接戦で三条市が勝利した。その栄誉を称えるため、両市の名前が刻まれた優勝プレートは、次回まで三条市が上に来る形で『燕三条こうばの窓口』に飾られるという。

次回? それは現時点で未定ながら、参加者の歓声が響き渡った構内には、来年も実施されそうな気配が強く漂っていたのは確かだ。

先を見据えた思いがあふれる受賞者の声


“燕三条地域の技術と人々をつなぐ地方創生型ワークプレイス”として2023年2月に開業した『燕三条こうばの窓口』。スペース内では、商品化に向けて金型製作が進む第3回の『さけだるま』を始めとする過去のグランプリ受賞作の展示によって、AWARDの進捗状況が示されていた。

多くの来賓と審査員、そして今回の受賞者を招いて行われた授賞式は、予定通り15時にスタート。授与は7名の審査員賞から始まり、小中学生の部のグランプリと優秀賞、一般の部・クリエイターの部の優秀賞、JR賞、グランプリと続いた。当日参加した審査員からは、審査段階では公平を期すためプロフィールの一切を知らされなかった受賞者と対面できるよろこびが語られた。

では、話を聞けた受賞者の声を紹介する。

最上部にリスを配した小物入。東京から参加した14歳。

<小中学生の部 優秀賞 はじめのいっぽ/稲吉陽郷さん>

「デザインテクノロジーという学校の授業で3Dプリンターを使い、物入だけは形になったのですが、リスの立体部はつくれなかったので、こうして再現してもらえたのがうれしかったです。リスは、コロナの最中に軽井沢へ移って勉強していたとき、家のすぐそばの切り株で目撃して、とても癒されました。その気持ちを共有したくてリスを添えました」

大分から来てくれた14歳は自身で製作した光る棚を持参。

<小中学生の部 優秀賞 ライトフックシェルフ/植田晴也さん>

「電子工作で光を放つ装置を自作してから、何に使えるか考えたのがこの作品です。金属棒の通電の仕方に様々な可能性があるんじゃないかと思いました。ものづくりは、試行錯誤するのが楽しいです。趣味というより学びとして続けていきたいので、このAWARDもまた応募したいです」

現役大学生が考えた、傘についた雨の雫を利用する植物容器。

<一般の部・クリエイターの部 優秀賞 プランター傘立て/原口紘輝さん>

「大学ではプロダクトデザインを学んでいます。将来もその道に進みたいと思っていて、様々な賞にも応募しているので、今回の受賞は大きな励みになりました。今日ここで試作品の実物を見て、ますます商品化したい気持ちが強くなりました。いつかはこの賞の審査員になりたいですね」

前回報告した、燕三条地域で試作品製作の現場見学レポートに登場した、『磁石立皿』でJR賞となった藤田博文さんと、『table×planter 暮らしと自然をつなぐ』でグランプリに輝いた植野靖隆さんも授賞式に顔を見せた。彼らには、最新バージョンの試作品に触れた感想をもらった。まずは藤田さんから。

「皿の裏側の縁の高さや厚みなど、実体化するほどに問題点が出てきますが、それをつくり手の方々と話し合って解決していく工程も、より楽しくなっています。だから何としても形にしたいですね。前回の工場見学で教えてもらった、米粉による製法。今回見せてもらった実物はとても素晴らしかったです」

続いて植野さん。試作品製作の担当者とは、工場見学後にもメールでコミュニケーションを取ったそうだ。

「実際の商品になったときのイメージに近いパーマネントへアライン加工や、鉢の部分の排水方法の検討など、いろんなアイデアをやりとりさせてもらいました。授賞式会場では、このテーブルのサイズ感がいいという声をいただきましたが、個人的には別サイズの派生モデルもすでに考えています」

第5回AWARDのテーマは、新たな祭りへの思いも込めた『おでかけ』


各賞の授与が終了し、司会を務めた『EkiLabものづくりAWARD』実行委員長の渕岡優介さんから、第5回の開催決定が報告された。2024年のテーマは『おでかけ』だという。

AWARDのさらなる発展と認知度向上のためには、より多くの方の応募が不可欠です。そこで、おそらく誰でも取り掛かりやすいテーマを選びました」

次回に向けたメッセージとともに授賞式は無事終了。その後は、各賞の受賞者や審査員、そして燕三条地区の人々がものづくりに向けた思いを語り合う懇親会が開かれた。ここで渕岡さんに、新テーマ選考の理由を含み、第5回となる『EkiLabものづくりAWARD2024』に託す思いをたずねた。

「審査会でも話し合われましたが、このAWARDの応募作品のクオリティが年々向上する中、“より参加者を増やしたい”というのが私たちの願いなんですね。そこで未来ある子供たちにも応募しやすいテーマにしようと。それが『おでかけ』とした理由です」

▲『EkiLabものづくりAWARD』実行委員長 渕岡優介さん

さらに渕岡さんには、今回の授賞式を受けた次回への大きな期待があるという。

「ドッツアンドラインズの齋藤が、審査員賞として“こと”を提案した燕と三条の綱引き大会を選んだのは、このAWARDの可能性を広げる上でも大きな意味があったと思います。JRのサポートをいただきながら、あれだけ多くの方に集まってもらえて、これは祭りの核になる手応えを得ました。というのも、燕と三条にはそれぞれ祭りがあるものの、“燕三条の祭り”はなかったんですね。そんなものづくり地域全体の祭りの中にこのAWARDを入れ込んだり、あるいはマルシェなどの併催でより多くの人に楽しんでもらうというような、ワクワクする未来像を描けたのも“こと”の発想のおかげです。ぜひ私たちで新しい祭り企画し、第5回の授賞式で実現させたいと思います」

『おでかけ』をテーマを掲げた『EkiLabものづくりAWARD2024』。間もなく発表される詳細な応募要項に、ぜひ注目していただきたい。

EkiLabものづくりAWARD 公式サイトはこちら

 
 
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text by 田村十七男

Photos by  斎藤恵

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